帯状疱疹ワクチンについて
帯状疱疹ワクチンのご案内(2025年4月より定期接種開始)
2025年4月1日より、鹿児島市では帯状疱疹ワクチンの定期接種※1が始まりました。
ひらやま脳神経外科では、生ワクチン「ビケン®」を採用しております。※2
※1 予防接種には、法律に基づいて市区町村が主体となって実施する「定期接種」と、希望者が各自で受ける「任意接種」があります。
※2 免疫不全の方は生ワクチンは禁忌とされていますので、不活化ワクチン「シングリックス®」を採用している病院にご相談ください。
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、水ぼうそうにかかったことのある方の体内に潜伏していたウイルスが再活性化し、神経に沿って痛みを伴う水疱が帯状に現れる病気です。前胸部から腋窩部にかけて帯状の水疱を伴うことで有名ですが、腰や頚部、頭部、顔面でも起きることがあります。顔面で発症した場合、顔面神経麻痺を起こすこともあります。
特に高齢者では、皮膚症状が治った後も長期間痛みが残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」を引き起こすことがあり、生活の質が大きく損なわれることもあるため注意が必要です。80歳までに、約3人に1人が発症すると言われています。
帯状疱疹を疑ったらすぐに、抗ウイルス薬による治療を開始することが重要です。四肢や体幹部であれば皮ふ科を、頭頚部であれば皮ふ科、耳鼻咽喉科、脳神経内科、脳神経外科の受診をご検討下さい。
稀ですが、顔面帯状疱疹では失明に至ることもあります。眼の周囲に帯状疱疹を発症した場合は、眼科受診も必要です。
定期接種の対象者
- 2025年4月2日~2026年4月1日に以下の年齢になる鹿児島市民:
65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳 - 60歳以上65歳未満で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫障害がある方※
- 100歳以上の方(2025年度限定)
上記の年齢に該当しない50歳以上で接種希望の方は、任意接種となります。
※ 免疫不全の方は生ワクチンは禁忌とされていますので、不活化ワクチン「シングリックス®」を採用している病院にご相談ください。
接種料金
定期接種対象の方は、役所から送付された予診票に必要事項を記載してご持参ください。
- 定期接種対象の方は、1回3000円
- 任意接種ご希望の方は、1回8000円(税込)
※生活保護・市民税非課税世帯の方は証明書提示で無料となります。詳しくは、以下の鹿児島市のページをご確認ください。
ワクチンの種類と比較
日本で使用されている帯状疱疹ワクチンには、「ビケン®(生ワクチン)」と「シングリックス®(不活化ワクチン)」の2種類があります。どちらも帯状疱疹の予防に有効ですが、それぞれに特徴や違いがあります。
ワクチン名 | 種類 | 接種回数 | 主な副反応と頻度 | 販売承認年度 |
---|---|---|---|---|
ビケン® | 生ワクチン | 1回 | 接種部位の赤み・腫れ・痛み(10%未満で軽度) | 1986年 |
シングリックス® | 組み換えワクチン | 2回(2ヶ月以上間隔) | 痛み・筋肉痛・疲労感(70~80%で中等度から強度) | 2018年 |
- ビケン®(生ワクチン):弱毒化した生きたウイルスを使って自然な免疫反応を誘導します。1回の接種で済みます。約5年の予防効果が期待されます。
- シングリックス®(不活化ワクチン):ウイルスの成分と免疫増強剤を組み合わせたワクチンで、より強い免疫反応を引き起こします。2回接種が必要です。約10年の予防効果が報告されています。
帯状疱疹と認知症の関係
近年、帯状疱疹やヘルペスの予防がアルツハイマー型認知症のリスク軽減につながるという研究が注目されています。
ワクチンによって神経へのウイルス再活性化を防ぐことで、慢性的な炎症や神経損傷が抑えられる可能性があります。
代表的な研究例:
- Herpes zoster vaccination and risk of dementia: a population-based study (2023, *eClinicalMedicine*)
- Zoster vaccination reduces risk of dementia (2022, *J Infect Dis*)
より強力で長期間の予防効果があると考えられている不活化ワクチン「シングリックス®」の接種者は、ゾスタバックス®接種者と比べて、6年以内に認知症と診断されるリスクが17%低かったことを報告する研究もあります。
また、帯状疱疹が脳卒中や心臓病のリスクを高めることを示唆する研究もあります。
この研究によると、帯状疱疹ワクチン接種を受けた人は心血管疾患全体のリスクが23%低下したとのこと。内訳を見ると冠動脈疾患のリスクが22%、心不全のリスクが26%、脳卒中や心臓発作などの主要な心血管リスクが26%低かったことが報告されています。
帯状疱疹ワクチン接種による心血管疾患のリスク軽減効果は、接種から2~3年間が最も強かったそうですが、効果は最大8年間持続することもわかりました。この研究の対象となったワクチンは「ゾスタバックス®」という生ワクチンで、当院が採用した生ワクチン「ビケン®」と本質的に同じワクチンです。
まとめ
当院では、高い安全性を評価し「ビケン®」を採用しております。なお、生ワクチンを接種した場合、他の生ワクチンの接種は27日以上間隔を空けることが推奨されています。
帯状疱疹の予防は日常生活を守り、将来的な健康維持にもつながります。
どうぞお気軽にご相談ください。