片頭痛の予防注射「抗CGRP抗体薬」について
CGRP(calcitonin gene-related peptide:カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛の直接の原因と考えられているタンパク質です。
痛みに関連する三叉神経という神経から放出されたCGRPが、脳血管平滑筋細胞の表面にある受容体にキャッチされると、脳の血管が拡張し神経に炎症が発生して頭痛や吐き気、眠気が生じると考えられています。
CGRPや、CGRPの受容体をブロックすることで片頭痛の最大値減少と頻度減少を狙う注射薬が2021年に3剤発売されました。(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)
発売前の臨床試験では、片頭痛発作が半分以下になった方が60%以上、片頭痛発作が全くなくなった方が約20%と、非常に高い治療効果が期待出来る薬です。
また、注射部位の疼痛や発赤などを除き、重篤な副作用が発現する可能性が極めて低い使いやすい薬でもあります。
当院では、以下の条件に該当する方に抗CGRP抗体薬を推奨します。
- 3カ月以上の片頭痛日数が、1ヵ月に平均4日以上ある方
- 日常生活を工夫し、鎮痛薬の服用を適切に行ってもなお、片頭痛で日常生活に支障をきたしている方
- 片頭痛予防薬に効果が感じられない、または副作用で継続できない方
なお、18歳未満の方は「使用不可」、妊娠中の女性、授乳中の女性は「慎重投与可」となっております。
初回費用(3割負担) | 2回目以降の費用(3割負担) | 特徴 | |
エムガルティ | 約27000円※ | 約13000円 | 初回に2本打つことで素早い効果発現に期待 |
アジョビ | 約13000円 | 約13000円 | 安定したら、1回で3本の注射が可能 |
アイモビーグ | 約13000円 | 約13000円 | アレルギー反応や継続使用効果減弱が他剤より少ないとの報告がある |
※エムガルティは初回に2本打つため
3回打って効果の実感がなければ、他剤に変更するか一旦終了して様子をみます。当院では、はっきりと効果を実感出来る方は1年間は毎月継続し、その後は注射の間隔を空けていくようにしています。
注射開始後の体感として、「1ヶ月で頭痛の最大値が半分近くまで減った」、「3ヶ月ぐらいで、頭痛の頻度が半分ほどに減った」という声を多くお聞きしております。
長年の片頭痛でお困りの方、是非CGRP抗体薬をご検討ください。