くも膜下出血【画像診断シリーズ15】
皆様こんにちは
今回の画像診断シリーズは【くも膜下出血】について
●一般的知識
くも膜下出血はその原因から
①外傷性くも膜下出血 と ②外傷機転など明らかな原因がなく突然発症の
頭蓋内くも膜下出血を特発性(非外傷性)くも膜下出血に分類される。
②の原因としては脳動脈瘤、脳動静脈奇形、脳動脈解離、もやもや病、硬膜動静脈奇形、
静脈洞血栓症による静脈うっ滞、脳血管炎、アミロイドアンジオパチー、脳腫瘍からの出血穿破、
凝固異常、PRES(可逆性後部白質脳症)、可逆性脳血管攣縮症候群などがある。
このなかで最も頻度が高く、臨床的に重篤な神経症状をきたす病態は、脳動脈瘤の破裂である。
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血には発症直後の突然死もありうる。脳動脈瘤の破裂は30歳以降
に好発し、加齢により発生頻度が増加する。男性では、50歳代にピークがある(いわゆる働きざかり)。
脳動脈瘤は脳底部の内頚動脈系および椎骨脳底動脈系主幹部~皮質枝近位側の分岐部に発生する。
特に①内頚動脈(特に後交通動脈起始部)(25~35%)
②前交通動脈(30~35%)
③中大脳動脈分岐部(20~25%)
④脳底動脈先端部(5%)
に好発する。
すなわち脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は鞍上槽~大脳谷槽、シルビウス裂、そして橋前槽
に好発する。
(「画像診断まとめ」より引用)
●画像診断
急性期くも膜下出血は、CTにてほぼ確実に診断できる。ただし、診断率は必ずしも100%
ではない。
急性期くも膜下出血は高吸収域を呈する。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血では、
脳底槽を中心としてくも膜下出血を認めるが、くも膜下出血の局在優位性により、
破裂動脈瘤の部位を推測することができる。
内頚動脈瘤破裂では鞍上槽~迂回槽に、前交通動脈瘤破裂では大脳縦裂に、
右中大脳動脈分岐部動脈瘤破裂では同側シルビウス裂に、脳底動脈瘤破裂では
鞍上槽~橋前槽、迂回槽にくも膜下出血が認められる。またくも膜下腔から
脳実質内に進展した動脈瘤が破裂すると実質内出血を形成することがある。
脳動脈瘤の精査には造影CTアンギオグラフィーや、選択的の動脈造影を施行する。
ただし、CTでくも膜下出血の確定診断や完全除外できないときは、MRIによる
精査を行う。FLAIR像では急性期~亜急性期のくも膜下出血は高信号を呈し、
少量の出血や亜急性期以降においてはCTよりも検出能に優れる。またMRangiography
では非造影で動脈瘤を診断することができる。
●警告頭痛
典型的なくも膜下出血は今まで経験したことのないような激しい頭痛で発症するが、
出血量が少量であったり高齢者では、頭痛が軽微で一過性のこともある。
少量の出血でも、急性期に動脈瘤の再破裂、大量の再出血をきたすこともあり、
早期の段階で確実に診断することが必要である。少量のくも膜下出血や発症から
数日経過した少量の凝血塊を形成しないくも膜下出血症例では脳脊髄液循環による
洗い出しによって濃度が低下するため、吸収値が低下し典型的な高吸収ではなく
等吸収を呈して診断が困難になることがある。また血腫のX線吸収値は
ヘマトクリット値と比例して低下するため、重度の貧血症例では典型的な高吸収を
呈さないことがあり、少量の出血、くも膜下出血の診断には注意を要する。
くも膜下出血も読影に際しては、高吸収域のくも膜下出血を検出するのみではなく、
等吸収のくも膜下により正常の脳槽、脳溝が消失していないかチェックする
必要がある。このような少量のくも膜下出血の診断にはMR(FLAIR)が有用であり
必要に応じて追加する。
【症例提示】
●頭痛を主訴に来院。
意識清明、血圧147/104mmHg、 脈拍101回/分、既往歴は特になし。
2日前に旅行先の北海道にて昼に突然、これまでに感じたことのない衝撃を
頭に感じ、両耳がぼわんとなり同時に頭痛が始まった。その後、飛行機で鹿児島に
帰ってきても頭痛が改善しないためお一人で車を運転して来院。
【頭部CT】
鞍上槽が少し白く写っています。右大脳谷槽と比較すると左大脳谷槽は見えません。
シルビウス裂も右と比較すると左は隙間が見えません。そして少し白く写っています。
その後、手術・入院できる施設へ救急搬送となり、その日のうちに緊急手術となりました。
やはり症状としては、今までに経験したことのないような頭痛には要注意です
その場合には画像精査をお勧めします
放射線技師 武宮 太
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