肺分画症【画像診断シリーズ14】
今回の画像診断シリーズは【肺分画症】について
【肺分画症(pulmonary sequestration)】
肺分画症は、正常な気管支や肺動脈との交通がない異常な肺組織からなり、体循環系の動脈支配を受ける嚢胞性病変である。稀な疾患で、先天性肺疾患の5%を占める。分画肺の構造は必ずしも異形成ではなく、正常肺組織を含むこともある。栄養血管は胎生期の遺残血管であることが多く、この疾患の特徴のひとつである。この異常血管は胸部大動脈あるいは腹部大動脈から分岐することが多い。静脈還流はさまざまである。
肺分画症は、正常肺とともに臓側胸膜により囲まれる肺葉内分画症と、正常肺とは臓側胸膜を共有せずに壁側胸膜で囲まれる肺葉外分画症とに分類される。肺葉内肺分画症は肺静脈を介して左房に還流することが多く(95%)、肺葉外分画症は下大静脈や奇静脈などの大循環系に還流する場合が多い。
診断にはCTが有用である。内部構造が均一あるいは不均一な軟部腫瘤として認められ、液面形成を伴う空洞を伴う場合がある。
●疾患概念・臨床のポイントをまとめると
正常気管支と交通を持たず、肺動脈ではなく体循環系から供血を受ける異常な肺組織。
好発部位は左下葉。反復する肺炎の原因のひとつ。
多くは肺内型分画症である。肺外型分画症はその他の先天奇形の合併が多い。
58歳男性の方で、認知機能低下と筋力低下があり、昨日より下痢、水様便。採血で肝機能上昇に対して行われた腹部CTにて胸部の異常を指摘。
後日撮影された胸部X線単純写真とCT画像。
(X線単純写真)
どうでしょう?レントゲンで異常所見は拾えましたか
次に胸部CT画像をご覧ください
●画像所見のポイント
流入動脈/主に下行大動脈・腹部大動脈
流出静脈/肺内型分画症では主に肺静脈、肺外型分画症では奇静脈、門脈、下大静脈など。
正常気管支との交通はみられない。
肺野は、感染や他の合併病変の有無により、嚢胞状構造や腫瘤影など多彩な陰影を呈する。
●鑑別疾患
肺底動脈大動脈起始症
気管支拡張症
肺膿瘍
先天性嚢胞状腺腫用様形成異常症
肺腫瘍
気管支嚢胞
胸部画像診断は典型的な画像所見からそうでない所見もあるため、既往歴や現病歴、他の検査(喀痰検査など)などの結果から診断に結びつくものも少なくありません。
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